2017.10.27

クリエイターになるには「いま目の前にある好きなことを大切にする」こと。|プログラマー 鍛治屋敷圭昭 / ミュージシャン [.que] 【講義レポート Vol.02】

※横瀬クリエイティビティー・クラス《講義編》とは。
2017年7月から10月にわたり、中学生を対象にクリエイティブ職の仕事内容や考え方を紹介していく取り組み。自分の好きなことを、どうやって”仕事”に繋げていくか、どのような”技術”を学べば良いのか。映像作家(脚本家)/アートディレクター/ディレクター・プロデューサー/写真家/ライター(編集者)/エンジニア/音楽家/プロダクトデザイナー/イラストレーターなど都内で活躍する全9職種のクリエイターたちが講師として授業を行ないます。クリエイティブソンにはじまった横瀬クリエイティビティークラスの最終的な成果発表に向けて、クリエイティブそのものへの理解と技術の強化が目的です。

SCHEMA 橋本健太郎さんとGarden Eight 野間寛貴さんによる『プロデューサー編』を皮切りに始まった、横瀬クリエイティビティー・クラス《講義編》。Vol.2では、都内のクリエイティブエージェンシー、AID-DCC Inc.でプログラマーとして活躍する鍛治屋敷圭昭さんと、ミュージシャンでありながら、作詞・作曲・編曲とそれらの提供まで、幅広く活動されている[.que](キュー)さんが先生となって、横瀬の中学生たちに授業を行いました。

まるで違う仕事をしているように見える、2人の共通点とは‥?『プログラマー / ミュージシャン編』、その授業の様子をレポートします!

ルール無用で課題解決を目指す。誰かのためにモノづくりをする仕事。|プログラマー編 前編

この日の授業は『プログラマー / ミュージシャン編』‥ということで、場所はなんと横瀬中学校の音楽室。決して狭くない階段状のフロアに肩を寄せ合って座らなければならないほど、大勢の中学生たちが集まってくれました。

会場が熱気で包まれる中、いよいよ授業のはじまりです。はじめにお話ししてくれたのは、プログラマーの鍛治屋敷圭昭さん。

AID-DCC Inc. プログラマー 鍛治屋敷圭昭さん

プロジェクトの発生から実制作、そして公開までの流れに沿って、それぞれの段階でどのような作業をプログラマーが行っているのか、具体例を交えて説明してくれました。

仕事の依頼が来て最初に行うプランニング(企画)では、クライアントが困っていることを解決するためにどうしたらよいかを手段を問わずにひたすら考えるのだそう。

「僕らプログラマーはアイデアをテクノロジーで形にすることができる。それがまだ誰も体験したことのない新しいものになることもよくあるので、クライアントには努力を惜しまずそれを伝えます。」と鍛治屋敷さん。

実制作の段階になっても、作ろうとしているものに前例がないこともしばしば。
『いい体験』をつくるために、とにかく実際に手足を動かして検証し、人に会い、あらゆる場所へ足を運び、情報収集をしてはまた検証する‥ということを繰り返すのだとか。

「インターネットで調べただけでわかった気にならないことが大切です。」インターネットが普及している現代だからこそ、リアルな体験でしか得られないことを大切にしているそう。

目の前の好きだと思うことを大事にしろ!そしてとにかく手を動かせ!やりたいと思ったら、いつからでもできる!

実は、鍛治屋敷さんはもともと広告代理店でプロデューサーやマーケターとして活躍していたにも関わらず、自分でも手を動かしたくなり全く違う職種であるプログラマーへと転職を果たした、異色の経歴の持ち主。

「今はプログラマーという肩書ではありますが、僕がしたかったのは誰かの課題を解決するためにルール無用でモノづくりをする仕事でした。そのための手段はいろいろとあるだろうけれど、自分にとって最強だと思える手段がプログラミングだった。」

「プログラミングに限らず、ルール無用でモノづくりをするにはいろんな経験が生きてきます。みんなが今好きなことも経験も、ムダにはならない。なんでもいいから手を動かしてカタチにしてみましょう。とにもかくにも、好きなことに夢中になりましょう。」というメッセージで前半の授業を締めくくりました。

プログラミングは魔法じゃない。向いているのは「ダメな人間」?|プログラマー編 後編

授業の後編が行われたのは9/22(金)。子どもたちが再び教室に集まりました。

「それでは今日は実践編です!!」とのことなのですが、なんだかとても難しそうな印象のプログラミングを“実践”する、とは‥?

「ごちゃごちゃ考えるより、とりあえずやってみるのがクリエイティブにはとっても大事!」ということで、早速プログラミングを「体感」する授業の始まりです。

プログラミングとは、「コンピュータプログラムを作成することにより、人間の意図した処理を行うようにコンピュータに指示を与える行為(Wikipediaより)」‥なのですが、実践編として鍛治屋敷さんが用意してくれたのは「人を動かすためのプログラムをつくる」授業でした。

まずは子どもたちを2つのチームに分け、それぞれに別々の「ある一連の動作をする人の映像」を見せます。その後、各チームでその動きを細かく分解し、カードと言葉に落とし込み、プログラミングとして整理。

鍛治屋敷さんが用意した、「人間プログラミングカード」の例。

片方のチームが動画を見ている間、教室の外に出された残り半分のチームメンバー。中の様子が気になる‥けどみちゃだめだよ〜

相手チームに作成したプログラミングを見せ、最初に見た動画の通りに動かすことができたらプログラミング成功!となるわけです。さて結果は‥?

実際のプログラミングは地道で面倒。

人の動きを細かく言葉に落とし込んでいく=プログラミングの作成にかなり苦戦した子どもたち。映像通りに相手チームを動かすこともなかなかできず‥。しかし、これこそ鍛治屋敷さんが子どもたちに感じさせたかったことでした。

プログラミングを書き出す子どもたち。腕一つ動かすのにも、右左の指定、動かす方向、手の形などなど‥思った以上に決めることが多いことに気がつきます。

「プログラミングは外から見ると魔法のように見えて、実は全て細かく作られている。今やってみて感じていると思うけど、実際には地道でめんどくさいものです(笑)。全てを自分の思い通りに決めることができるけれど、裏を返せばそれは全部を自分が決めなければならないってことなんです。」

やっぱり、プログラマーになるのって大変なのかも‥と思いきや、「実は几帳面な人や細かいことに気づく人よりもダメな人間の方が向いてます。」と鍛治屋敷さん。

「同じことを繰り返したくない、なんでも早く終わらせたい、という“ラクをしたい”気持ちが強い人こそ、プログラミングでなんとかできないかな?と一生懸命考えることができる。みんながさっき感じた、めんどうだなあ。という気持ちが、すでにプログラマーになるための素質なんです。

華々しい部分を見せるだけなら簡単だけれども、アウトプットまでの地道さや面倒さなど、プログラマーの本質を伝えたかったという鍛治屋敷さん。
子どもたちはゲームのように楽しみながら、プログラミングの大変さと面白さの両面を体感することができたようでした。

ピアノも習ってない。音楽学校にも行ってない。でも音楽が好きだから今ミュージシャンになっている。|ミュージシャン編 前編

ミュージシャン編で講師として教壇に立ってくれたのは、ミュージシャンとして活躍し、楽曲や作詞の提供なども行なっている[.que](キュー)さん。はじめに、日頃の活動や、どのようにミュージシャンになったのかをお話ししてくれました。

ミュージシャン [.que] / nao kakimoto

今でこそ、数多くのCDをリリースし、ライブを開催したり、テレビやウェブCM向けの楽曲を制作・提供したりと、まさにミュージシャン!という活動をされている[.que]さんですが、実は大学卒業後は普通のサラリーマンをやっていたそう。

「ぼくは子どもの頃からずっと音楽が大好きでミュージシャンになりたかったんですけど、いざ将来の仕事にするとなったらやっぱり勇気が出なかった。テレビで見ているようなミュージシャンのように自分は“なれるわけない”と思ってしまったんですね。」

しかしサラリーマンとして働く日々の中でも、音楽が好きな気持ちはおさえられず、休日は楽曲作りに明け暮れていたそう。そしてそれらをネットで発表するということを繰り返しているうち、なんと現在の音楽事務所からスカウトの声がかかり、デビューのチャンスを掴んだのです。


代表曲である「Farewell」。[.que]さんは作詞作曲、編曲に加え、ギター・キーボード・コーラスでも参加している。

せっかくなので‥みんなで曲を作ります!!

現在は数多くの曲をリリースするほか、大企業のCM音楽制作やアーティストへの作詞作曲提供、編曲など枠にとらわれない活動を続けるアーティストである[.que]さん。
スタジオでのレコーディング風景や、楽曲の際に使用するソフトの紹介など、どこか遠い世界の話のように聞いていた子どもたちでしたが‥

なんと[.que]さんから、「僕と一緒に、みんなで曲を作りましょう。そして、完成したらきちんとリリースしたいなと思っています。」との提案が!

実は横瀬クリエイティビティー・クラスのキックオフとして行われたクリエイティブソン以降、すでに横瀬をイメージした楽曲の制作に着手していた[.que]さん。それを、子どもたちと一緒に完成させようというのです。

子どもたちには次回の授業に向けた宿題として、

・曲名(タイトル)を考えてくる
・この曲に合う「音」を探してくる

この2つが[.que]さんから言い渡されました。

自分たちのつけた名前をもつ音楽が、自分たちの鳴らした音が入った曲が、世の中に出る‥想像しただけでもどきどきしてしまうような展開に、ざわめく子どもたち。

次回は、実際に子どもたちが考えてきてくれた「音」を、楽曲に落とし込むレコーディングを授業として行うそう!一体、どんな曲名や音が子どもたちから飛び出すのでしょうか。

表現することを、恥ずかしがらない。1番かっこいいのは、ぼく(わたし)だ!|ミュージシャン編 後編

ミュージシャン編 後編が実施されたのは8/30(水)。この日は前回よりもさらに多くの中学生たちが音楽室に集まってくれました。

前編の宿題として子どもたちに考えてきてもらっていたのは、楽曲の「タイトル」と録音したい「音」の2つ。まずはまだ制作途中の楽曲「NO TITLE(無題、の意)」をみんなで鑑賞した後、それぞれ考えてきたタイトル案を[.que]さんに提出します。リリース当日までに楽曲の仕上がりなどに合わせて、この中から1つの案がタイトルとして本採用されるそう‥!


どの案が選ばれるかは、当日まで子どもたちにもわかりません。これはどきどきです‥!

そして、続いてはいよいよ「音」を楽曲に入れ込んでいく作業、レコーディングです。
「録音したい音を探してくる」という宿題は少し難しかったようで、なかなか案が出ず‥[.que]さんからの提案で、ハンドクラップ(手拍子)や音楽室にある楽器の音を録音することに。

「レコーディングは、録った音を聞いて、調整して、また録って、調整して‥やっと理想通りの音が録れたら楽曲に組み込んでいく。そんな細かい作業の繰り返しです。」

[.que]さんの言葉通り、実際に録音した音を聴いてみると、ちょっと小さかったり、リズムが早かったり‥。それを少しづつ調整しながら、色々な音をレコーディングしていきます。


ハンドクラップ一つをとっても、リズムや音の大きさなど、録音を聴きながら理想の音になるように何度も調整していきます。

1人分、5人分のほか、全員分のハンドクラップも録音。こちらは大迫力!

音楽室にあった楽器、ウィンドチャイムの音も録音!きれいな音色が曲調にぴったりです。

調整と録音を繰り返して、レコーディングは無事に終了。これらの「素材」はこれからさらに綺麗に整えられ、楽曲を彩る「音」として組み込まれていくことになります。

表現することは、恥ずかしいかもしれない。けれど、いつかはそれが自信になる。

[.que]さんは授業のまとめとして、

「なんでもはじめは恥ずかしい。けれど、続けていくうちにだんだん慣れてきて、それが自信になります。だから表現することを恥ずかしがらないでください。まずは自分が1番カッコいい、カワイイと思うこと。そして興味があることには、なんでも挑戦してみてください。そして好きだなと思ったら、それに挑戦し続けてほしいです。」

と、子どもたちにメッセージを送りました。

今回制作した楽曲のリリースは、11月を予定しているとのこと。授業で録音した音が、どんな風に組み込まれ、そしてどんなタイトルが選ばれるのでしょうか。子どもたちと一緒に、わくわくしながらリリース当日を待ちたいと思います!

共通するのは、「好きなこと」に挑戦し続ける姿勢。

「ただでさえわかりにくいプログラマーという職業に、どうやったら興味をもってもらえるだろうか?と考えて授業を組み立てました。実践編は、パソコンがない中でどうしたらよいものか‥と悩んだ挙句の苦肉の策だったのですが(笑)楽しんでもらえたようで、よかったなと思っています。」と、授業を終えての感想を寄せてくれた鍛治屋敷さん。

[.que]さんも「普段なかなかできない体験だったので、僕自身すごく良い刺激をもらえました。今回の授業で少しでも子どもたちに音や音楽に興味を持ってもらえたら嬉しいです。Youtubeとかに曲をアップする子が出てきたらいいなあ‥」と、子どもたちの今後の変化などを楽しみにしている様子。

プログラマーである鍛治屋敷さんと、ミュージシャンである[.que]さん。実際にしている仕事は全く違うものですが、二人には共通するバックグラウンドがありました。

それは、一度は違う道に進みながらも、改めて自分が好きなことにまっすぐ向き合い直し、諦めずに挑戦をし続けたことです。

「何をするにも遅すぎることはないし、興味があること、好きなことには何でも挑戦してみてほしい」

「好きなこと」に挑戦し続けてきた2人だからこそ、子どもたちにも、今からその「好き」の気持ちを大切にしてほしい。そんな二人の想いが伝わる授業でした。

vol.3は「アートディレクター編」!
AID-DCC田渕将吾さん、SHIFTBRAIN鈴木慶太朗さん2名のアートディレクターが講師として登場します。どうぞお楽しみに!

著者:樋口あるの(AID-DCC Inc.

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