2017.12.21

全員主役の撮影現場!役割を通して広がる自分|アウトプット制作*後編

4月に開催されたクリエイティブソンを皮切りに、都内で働くクリエイターによる職業を題材とした講義や職場訪問を中心に展開されてきたクリエイティビティー・クラス。最後にこれまでのプログラムの集大成として、横瀬町の中学生たちが地域をテーマにしたショートムービーを制作していきます。これは映像制作の実践教育を通じて、コミュニケーション能力・課題解決力・表現力などさまざまな能力の育成が目的です。後編記事では模擬撮影とアウトプット作品の撮影の様子をお伝えします。

9/30(土)アウトプット制作5日目

カメラを使って模擬撮影!撮影現場の役割と手順を学ぼう

春に開かれたクリエイティブソンから半年。気づけば夏も過ぎ、横瀬も秋めいてきました。前回までに脚本術に基づいたストーリーづくりを終え、いよいよここから3日間かけて実際の作品の撮影が始まります。この日ははじめてカメラを使った実習、中学生たちの心も弾みます。

横瀬クリエイティブ教育プログラムの実践編として行われているこの映像制作。企画作り・脚本制作・そして撮影までのすべての行程を中学生たちが行いますが、撮影に入る前に、撮影現場のディレクション(演出や進行管理)と機材の操作を学ぶ必要があります。「アイデアを形にするには技術が重要」ーまさにクリエイティビティー・クラスを通してクリエイターたちが伝え続けてきたことです。

この日は映像ディレクターの田村さんによる座学の講義から始まりました。

ディレクター、カメラマン(DP)、照明(Gaffer)、美術・・・田村さんが撮影現場に必要な様々な役割を解説します。映像制作に関わりたい、と漠然と考えている生徒たちもこうして様々な職種を知ることで選択肢が増えていくことでしょう。

続いてカメラの基礎講座です。基礎といってもしっかりとカメラの原理を解説しながら「光量を変えずに被写界深度を浅くする為のF値とISOの関係は?」「動く被写体に対するシャッタースピードの変化は?」と問いかけ、中学生たちの理解度を確かめる田村さん。

どんどん投げかけられる質問に、中学生たちも必死にメモをとりながら考えていました。

びっしりと書かれた中学生のメモ。この後の実践で大いに役立っていました!

さて、座学はここまでです。
ここからは作品の撮影本番に向けて、「模擬撮影」という形で撮影現場での役割・手順、そしてカメラワークを実践しながら学んでいきます。

まずは現場での役割分担。今回は監督・カメラマン・カメラアシスタント・キャストを全員で話し合って決めました。

今回のアウトプット作品は、音楽家の[.que]さんの曲にあわせて、中学生たちが作った3つの脚本をつなげて、一つのミュージックビデオにする計画。生徒たちが考えた脚本の中から、撮影する3作品が田村さんから発表され、監督はそれぞれの脚本の作者がつとめることが決まりました。

撮影がきまった3作品。共通のテーマは「青春」です。

残りのカメラマン、カメラアシスタント、キャストも生徒たちの立候補を募り、この日駆けつけてくれた株式会社富士通の武田さんのサポートのもと役割を決めました。「キャストがやりたい!」「カメラマンやる!」と積極的に立候補する中学生たち。これまでに半年間行われてきたクリエイティブクラスを通じて、クリエイティブ職の具体的な仕事内容について知ったり、自分の興味関心を探求してきたおかげで、こういった場でも迷わず手が挙がるようになりました。

富士通の武田さん

続けてカメラワークの実習です。多くは初めて本格的なカメラに触れる子たち。
田村さんがレクチャーをしながら、基本的なカメラと三脚の操作やフレーミングを学びました。撮影本番の役割を中心に、役割を交代しながら学んでいきます。

キャスト役の子には演技の指導も。

カメラの操作やピントの合わせ方まで、丁寧にひとつずつ覚えていきます。

この日参加した中学生の半数近くは女の子。大きな機材の扱いにも臆さず、率先してカメラの操作をしていました。

操作に慣れてきたところで、いよいよ脚本を使って模擬撮影です。

中学生たちに渡されたのは、田村さんが用意した脚本と、香盤表(こうばんひょう)と呼ばれる撮影スケジュールが書かれた紙。「実際の撮影は時間や天候などの制約がある中で進めてなければならないので、スムーズな進行にはこの香盤表が不可欠だ」、と田村さんが伝えます。自身の普段の仕事と同じ資料を用意するのは、「子ども向け」の体験ワークショップではなく本物性を重視する田村さんのこだわりです。

脚本は、中学生同士の恋物語です。この日は、配役の関係上女子のキャストが足りず、男子同士の恋を描くことに。LGBT(セクシャルマイノリティー) という難しい題材を扱うことになりましたが、「複雑なテーマこそ表現に挑戦する意味がある」と話す田村さんは、中学生たちに真剣に取り組ませました。

屋外に移動し、全体の流れの中の各自の役割や動きを確認していきます。
これは仕事と同じ。それぞれが責任を持って自分の役割を果たそう」と真剣な眼差しで伝える田村さん。監督、カメラマン、カメラアシスタント、キャストー映像の撮影現場はひとつでも役割が欠けてしまっては成り立ちません。中学生たちの表情も引き締まります。

「本番入ります!」「はい、本番!」と全員で声をかけあい、撮影が始まりました。

いざ撮影がはじまると、ついさっきまで一生懸命メモをとっていた内容も、実践するのはなかなか難しいことがわかります。とくに一人で作業した脚本制作と違い、実際の撮影は、撮影したいイメージをカメラマンに共有したり、キャストに具体的な指示を出したりと、綿密なコミュニケーションが求められます。田村さんも時折助け舟をだしながら、撮影は進んでいきました。

監督の生徒に、動き方や意識することを伝える田村さん。

数ある役割の中でも監督(ディレクター)は特に難しい役割。撮影の全工程に責任を負い、現場での指揮を任され、状況に応じた臨機応変な判断が求められます。
田村さんは動きやカメラワークについて指導をしますが、監督の子たちの自主性を尊重して、一歩後ろにさがって見守ります。

撮影が進むにつれ、周りの動きを把握してサポートするのが上手になる生徒もいれば、積極的に演技指導をしていく生徒もいました。スケジュール通りに必要なシーンを撮り終えるという共通のミッションが、ひとりひとりの意識を変えていくようです。


「自分の動き方で現場が変わり、作品が変わる。」そのように感じた監督の生徒が、コンテには描いていない細かい演出の指示を自発的に出すように。

細かい表情や動き、シーンごとの繋ぎについて、監督を中心に意見を交わしながらみんなで調整していました。

それぞれが自分の役割を意識することで次第にチームワークも良くなり、一日の終りにはそれぞれの役割がすっかり板についた様子。会話も増え、自然と試行錯誤を繰り返す子どもたちの姿がありました。「自分の役割に対して責任をもとう」と冒頭で言っていた田村さんが感心するほど、中学生たちは撮影に没頭していました。

撮影した素材は田村さんの編集により、中学生たちの作品づくりへの真剣さが伝わる作品に仕上がりました。

はじめての本格的な撮影を通じて、いろいろな人とコミュニケーションをとりながら協働でものをつくる難しさと醍醐味を中学生たちは実感できたのではないでしょうか。

10/22(土)アウトプット制作6日目

はじめて自分たちの作品を撮影!本物の現場を知って成長する

模擬撮影からしばらくあけて、アウトプット作品撮影の1日目を迎えました。
ここから2日間かけて3作品を撮っていき、最終的に一つのミュージックビデオにします。

撮影ロケ地のあしがくぼ笑楽校に、出演する中学生たちが大勢集まり、賑やかなスタートを切りました。

前回の模擬撮影よりも大人数かつ時間の制約がある中での撮影。
中学生たちはこれまで学んできたことをどこまで撮影で発揮できるのでしょうか。

まずは映像ディレクターの田村さんと前回学んだことの復習をしました。

一通りカメラワークやディレクションのおさらいをしたあと、田村さんからこの日の撮影で使う機材の説明がありました。

使用するカメラはレッドデジタルカメラという業界最高峰の6K撮影ができるカメラ。
模擬撮影で使用したデジタルカメラよりも格段に大きくてハイスペックです。
映画やテレビの撮影現場でなければなかなか見ることのない本格的なカメラを前に、中学生たちも緊張した面持ち。

「このカメラ壊したら車3台が壊れるのと一緒だぞ〜」なんて田村さんが輪をかけるように脅かすので、なおさらです。

この日撮影する「水鉄砲」という作品は、掃除を真面目にやらない男子と真面目にやる女子が言い合いになり、そこに先生が仲裁に入り、水鉄砲で決着をつけるという青春をモチーフにしたストーリー。脚本を作った優輝くん(15) は「学校生活は楽しければいいんだ!ということを作品を通して伝えたい」と作品に込めたメッセージについて話してくれました。

撮影場所の教室に移動し、撮影開始!
監督が作成した絵コンテに沿ってカットを撮っていきます。出演者や撮影チーム全員が事前に脚本に目を通していたので、撮影は滞ることなく進んでいきました。

左から、この日のカメラマン竣也くん(14)、映像ディレクター田村さん、カメラアシスタント衣織さん (15) 。

「本番!」や「はい、カット!」などの声が飛び交う教室は、まるで映画の撮影現場!
コミュニケーションをとりながらカメラを回す中学生たちの姿もプロの撮影班そのものです。

町役場の職員も先生役として出演。

脚本と絵コンテを制作した監督は、それらに沿って出演者や撮影チームにイメージを共有しながら撮影の進行を管理します。そして随時田村さんと一緒に、カメラに繋いだモニターで素材を確認し、演技やカメラの露出、アングルなどを再調整します。

モニターで確認する田村さんと監督

細かい演出やカメラワークについて撮影チームで議論する様子も見られ、作品への想いやこだわりが伝わってきました。

出演する中学生たちも、はじめてとは思えない演技力!可能性がすごいですね。

すっかりカメラマンがサマになってきた竣也くん。カメラに向けて水鉄砲を発射されるシーンでも、涼しい表情です。

撮影が行われた教室には、たくさんの中学生が訪れ、興味津々に撮影風景を覗いていました

クライマックスの撃ち合いのシーン。現場の熱気も高まります。

撮影を忘れる勢いで夢中で水鉄砲を撃ち合う中学生たち。

現場は終始笑顔に包まれ、楽しい学校生活を描きたいという監督の意に沿うように、躍動感溢れる映像がたくさん撮れました。

チーム感がでてきた撮影メンバー。

この日は悪天候により教室が暗く撮影に不利な条件だったり、思いがけないこともおこり時間が押してしまったりしましたが、監督を中心に撮影班が柔軟に対応し、無事必要なカット数を撮り終えました。

一日の終わりには監督・カメラマン・アシスタントをつとめた3人の表情には自信が溢れ、撮影開始の緊張した姿とは見違えるように。自分たちのオリジナルの作品だからこそ責任感や自主性が生まれ、達成感や、やり遂げる自信を得たようです。

特に印象に残っているのは、学校が楽しめず、足が遠のく日もあったという監督の優輝くん。撮影で「監督」という役割を確立していく過程で、周りから認められたり、仲間とのつながりを実感し、自信につながったのかもしれません。

さて、次回はいよいよアウトプット制作最終日、残りの2作品の撮影です!

11/3(金)アウトプット制作7日目

全100カット撮影!チームワークが光った最終日

企画づくりから6日間にわたり取り組んできたアウトプット制作もついに最終日です。朝6時半、まだ薄暗い中、撮影をする2チームが川沿いの公園に集合しました。

当初は一日一作品ずつ撮影日を確保していたのですが、雨天で予定の変更が続き、止むを得ず1日で2作品を撮ることになりました。
全100カット、日没までの勝負。
プロでも厳しいハードな撮影スケジュールなので、チームワークが試されます。

最初に撮影する作品は、『夏の思い出』というタイトルの甘酸っぱいラブストーリー。男女二人の追いかけっこが軸になっていて、ソフトクリームが恋の駆け引きのモチーフとして使われています。監督は中学3年生の智夏(15) さん。「伝えたいのは男女のドキドキ。こうゆうのいいなあと思いながら作りました。」と照れながら説明していました。

右からカメラマンの智香さん(15)と監督の智夏さん(15)。

まずは映像ディレクターの田村さんからこの日使用する機材の説明がありました。
田村さんのアシスタントの西澤さんが DJI Ronin 2 というカメラギンバル(回転台)を取り出し、この日のカメラマンの雅貴(15) くんの装着を手伝います。

このカメラギンバルとは、移動しながら撮影する時にカメラを安定させるための装置。カメラとあわせると総重量20キロ前後あるため、体に装着して使用します。

今回の作品では、このギンバルを使い主人公にカメラも伴走する「移動撮影」に挑戦するようです。「走ってる時の表情や足元を撮影することにより一緒に追いかけてる感やハラハラ感が増す」と、躍動感を表現したい智夏監督の意向ですが、走りながら安定した画を撮るのはカメラに慣れたプロでも難易度が高いもの。

本番の撮影に入る前に、ジンバルを装着して予行練習をしました。
横走りでの撮影になかなか苦戦していました。

高価な機材を身につけたおぼつかない足取りの中学生を見守る田村さん。仕事で使う機材なだけに、少しだけ不安げな表情・・。

慣れてきたところで本番の撮影を開始。

ワンテイクごとに撮影したものを確認し、撮影チームが納得いくまで繰り返しました。
最終的にこの走るワンシーンの撮影は30分ほどかかり、さすがにカメラマンの額にも汗が滲んでいましたが、大きな機材の操作にもすっかり慣れた様子でした。

その後もロケーションをいくつか変え、撮影は進んでいきます。
横瀬町の豊かな自然を取り入れたシーンが多く、地域とのつながりが感じられる作品に仕上がりそうです。

バックには秩父の名山、武甲山。

なにやら楽しそうな撮影班。みんなの視線の先はなんと・・

・・棚田をダッシュする田村さん!和気あいあいとした撮影風景から、半年間一緒に過ごしてきた中学生と田村さんの関係性がうかがえます。

メインのカメラマンを担当したのは中学3年生の智香さん 。「元々イラストや映像に興味があったから、参加者募集ちらしをみた瞬間に直感的に参加しなければと思った」と気軽な気持ちで4月のクリエイティブソンから参加しているそうですが、アウトプット制作を通してさらに脚本制作や映像の面白さに気づき、今では映像が学べる学校への進学も選択肢として検討しているそう。カメラを握る眼差しからその熱意が伝わってきます。

ロケーションが多い中、監督の指揮のもと撮影は順調に進み、いよいよクライマックスの撮影に。クライマックスは、追いかけっこを続けてきた主人公の男女二人がついに対面するシーン。思春期の中学生たちにとって見つめ合うのはなかなか恥ずかしいようです・・・

中心が監督の智夏さん。

照れるキャスト二人に気合いを入れる智夏さん。その凛とした姿はすっかり本物の監督です。「最初は放課後の時間に参加するのがちょっと嫌だった」と話していた智夏さんですが、脚本づくりに没頭し、撮影でも誇りを持って現場を率いる姿が印象的でした。

照れながら演技をする二人を見守るみんなも照れ笑い。「青春」と言う言葉が似合う、そんなひとときでした。

続けて午後二時頃、最後の作品の撮影が始まりました。
『サブカル』というタイトルのこの作品は、トランペットを吹くことが好きな家出少女の話。テント住まいで親にも見捨てられ、トランペットだけが心の支え、という設定の作品です。「自分の好きなことをやっていたいという願望を投影した」と話す監督の大介くん(19)は、横瀬町在住の大学2年生。本来は中学生を対象にしたクリエイティビティー・クラスですが、本格的な取り組み内容にひかれ、強い熱意を持って参加してくれました。

横瀬町を見渡す展望台を舞台に撮影が進められました。

監督の大介くんとカメラマン智夏さん。

家出少女のイメージを見事に演じる葵さん(15)。配役ストーリーに合わせて制作チームみんなで考えたそうです。

監督のお母さんも母親役として出演。迫真の演技をみせます。

キャストと話し合いながら積極的に演出に工夫を加えていく監督

日没まで数時間・・残された時間はわずかです。
駆けつけてくれたクリエイターや町の人たちのサポートも受けながら撮影が進んでいきます。

毎回制作に参加してくれているアートディレクターの田淵さんと音楽家の[.que]さんも撮影を見守ります

この作品のカメラマンをつとめたのは「夏の思い出」で監督をつとめた智夏さん。
手持ちでの撮影にも積極的に挑戦しました。

本体とレンズを合わせると5キロ以上もあるカメラを手に、思わず「重い!!」の一言が。

臆さずカメラをもつ姿がたくましい!

早朝6時に開始してからおよそ11時間。タイトスケジュールの中、全員の協力により2作品、全100カットを無事撮り終わりました。

今回撮影した素材は、音楽家の[.que]さんの曲にあわせて映像ディレクターの田村さんが編集し、完成となります。クリエイターと中学生が一丸となり、企画から撮影まで約二ヶ月をかけて制作した作品。中学生とクリエイターの感性が合わさりどんな作品に仕上がるのか楽しみです。

「未来を切り拓く力」を培うクリエイティブ教育

今回のプログラムの構想は欧米のクリエイティブ教育から着想した、と話す映像ディレクターの田村さん。多様な立場の人と協働でものづくりをする過程で、中学生が「現代社会で生きる力」を培う場をデザインしたい、という意向を反映したプログラムになっていました。7日間の制作期間が「カタチとしての映像制作」ーどのように撮り、どういう手順で作るかを学ぶ場だけでなく、実社会で役立つ多様なスキル、例えばコミュニケーション能力・自発性・交渉力・チャレンジ精神・創造性を培う機会になっていたことが、中学生の変化から感じられました。

さらに、アウトプット制作に限らずクリエイティビティー・クラス全体を通して主催のクリエイターたちが目指していたのは、単にクリエイターを育成することではなく、参加した中学生が「未来を切り拓く力」を身につけること。「正しい答え」を求める力ではなく、創造的で協働的な姿勢が、多元化・複雑化したこれからの社会を生き抜く力になることでしょう。

『水鉄砲』監督の優輝くん。

今回のクリエイティブ教育の意義を考える際に参考になる概念があります。著者に「子どもたちの想像力を育む」などを持つ青山学院大学社会情報学部の苅宿教授が提唱する「代替不可能性感覚」、つまり「代わりはない」という感覚。苅宿氏は多元化社会おいてはこの「代替不可能性感覚」を獲得することが教育のミッションであるとし、本来「代替不可能性感覚」を持ち合わせているクリエイターが教育に携わる意義は大きいといいます。

実際に、今回のアウトプット制作で行った「オリジナルのストーリーを作る」というのは、まさに中学生たちが「表現の代替不可能性」「思考の代替不可能性」を追求した機会であり、撮影は役割を介して「存在の代替不可能性」を実感していく過程だったように思います。特に監督やカメラマンをつとめた中学生たちが、全体の中の役割を確立しながら成長していく姿をみると、映像制作という協働作業がこの「代替不可能性感覚」を獲得することに繋がっていることを実感します。

カメラマンをつとめた雅貴くん。

実証実験的にクリエイターと横瀬町の協働で実施してきた横瀬クリエイティビティー・クラスですが、“変化する時代”において子どもたちが必要な教育、それに対する地域や大人の役割、これらに関して多くの示唆を与える取り組みになったと考えています。コミュニケーションと試行錯誤の中から、創造性と自立性と自分の言葉を獲得していった中学生たち。彼らの変化が今回のような地域に根ざしたクリエイティブ教育の意義と可能性をあらわしているのではないでしょうか。今回の取り組みが、10年後20年後の中学生たち、そして町の未来にどう繋がっていくのか、楽しみにしています。

著者:寺井彩(Exit Film

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